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パソコンとお香があればだいたい幸せです。

2013年4月13日土曜日

とある精神科にて。


「これ、全部自分でやったの?」
「・・・はい、実感が、欲しくて」
「・・・実感?」
「温かい血が出てきて、あぁ僕生きてるんだ、って」

「Aさん、今度からリーゼっていう新しいのも処方しておきますね」
「先生、そうやって僕を薬漬けにして、金を巻き上げようとしてるんですよね」


「違うよ。最近はそういう医者もいるみたいだけどね」「試してみて嫌だったら言ってくれればいいから」

「変なこと言ってすいません」
「いいんだよ。たしかに薬多いよね、減らす?」


「ほんと、すいません」



「最近、すべての関係に利害が絡んでる気がしちゃうんです」
「利害?」
「みんな、自分の利益を最大化しようとしてるんです。僕も先生も。」
「パレート最適じゃないと?」
「パレート最適かもしれないし、そうでないかもしれない」「人間はそこまで完全なものじゃなくて、無意味な感情とかそういったものにある種されていて、不完全な存在だと思ってたんです」
「不完全ではなかった?」
「いや、不完全でした」「でも、その不完全な中でもいくつかの原理に従って完全を目指そうとしていました」
「原理?」
「たとえば利害関係です」
「うん」
「僕らは完全なハードではないけれど、はっきりとしたシステムがあるんです」「僕が温もりを求めてしまうのはそこにあるんだと思います」



「そんなに難しく考えなくていいんだよ」「僕らは、生命体の1つで、ぜんぜん合理的なんかじゃないんだ」「感情の赴くままにすればいいんだ」
「感情に赴いたら、こういう傷が増えていくんです」「僕だって、親父が悲しむのは分かってるんです」
「自分の感情に従うことは大切だ。けれど、自分に傷をつけることは別だよ」
「先生の言っていることが矛盾しすぎていて、全く理解できません」


「そう、僕も不完全なんだ」「そうだ、水泳の方はまだ続けてる?」
「市民プールの管理の人が、いつも僕を睨んでくるんです」
「違うよ、気のせいだよ」「水泳した日はどうだろ?気分とか
「次の日起きるのが辛くなるくらいです」「寝つきは変わりません」
「そうか、朝辛いか笑」
「僕、頭に人の何倍ものドーパミンとか、脳内麻薬が流れるんです」「それで寝れなくなるし、全てに過敏なんです」
「なんで分かるの?笑」
「たまに頭にピシーって電流が流れるのが分かるんです
「みんな、ピシーってなってるかもしれないよ?笑」



「じゃあ、次の予約も入ってるから、そろそろお開きにしようか」
「はい」
「今日、僕と話して少しは気持ちが楽になったりはしたかな?」
「いいえ、とくに」
「そうか。僕には何でも話しておくれよ」
「どうでしょう、気づいたらナッシュ均衡に落ち着いてるかもしれませんね、お互いに気を付けましょう」
「また待ってるよ」



「先生、Aさん随分長かったですね」
「彼とは、いつも長いよ」
「へー、そうなんですかー」
「そういえば、彼には今後ラモも処方しようと思ってる」「申請書類、用意しといてくれるかな」

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