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tokyo, Japan
パソコンとお香があればだいたい幸せです。

2012年3月28日水曜日


とある街にて


「おつかれー」
「あ、おつかれ様です」
「今日は遅番じゃないんだ?」
「遅番だったんですけど、今日そんなに人いらないみたいだったんで、帰らされました」
「あのマネージャーほんと人使い荒いわよね。」
「今日疲れてたんで、ちょうどよかったです」
「優しいのね」「あ、終電何時?」
「0時半です」
「らーめんでも食べない?」
「鉄二ですか?」
「嫌い?」
「自分は、中村二代のが好きです」
「しょうがないなぁ、じゃ中村にしたげるよ」
「ありがとうございます」

「Aくんて、みんなと飲み会行ったりしないの?」
「あんまり、お金ないんで。あと、あんまりオールとかが好きじゃないので」
「私も。」「みんな学生だからいいわよねー。私は生活カツカツだから行かないわ」
「Aさんて、いくつなんですか?」
「いくつに見える?」
「32」
「ビンゴ!」「知ってたの?」
「いや、なんとなくです」
「たいていもっと若く見られるんだけどねー」
「すいません笑、そういう機転が利かないもので。。。」
「冗談よ笑」「Aくんて彼女いるの?」
「いません」
「えー、モテそうなのにー」

「いらっしゃいませー」

「何にしようかしら。。。」「いつも何頼んでる?」
「太麺の味玉のせです」
「じゃそれにしてみよーっと」

「深夜なのに意外と混んでるわね」
「そうですね」
「さっきの続きだけどさ、なんで彼女つくらないの?欲しくないの?」
「欲しいですよ。単純にできないんです」
「どんな子がタイプなのよ?」
「んー、自分でもあんましよく分からないですけど、昔好きだった子はおとなしい子でした」
「へー、かわいかった?顔は誰に似てた?」
「えーと、なんだっけ、名前が思い出せない。昔よくテレビに出てた女優の。。。」
「?」
「ちがいます」
「?」
「ちがいます」「黒髪ロングヘアーで、風邪薬のCMに出てるような女優です」
「えー?誰よ」
「とにかくそんなかんじの子でした」
「へー、結局その子とはどうなったのよ?」
「グイグイきますね笑」「なんもありませんでしたよ」
「高校のとき?中学?」
「高校のときです」「クラスメイトでした」
「いいわー。青春ねー」「告白したの?」
「してないです」「他のやつと付き合ってしまったので」
「うわ切ない(ToT)」

「お待たせしました、太めん味玉のせです。熱いのでお気をつけくださーい」

「はい、お箸」
「あ、ありがとうございます」
「いただきまーす」「おいしい!意外とさっぱり系ね」
「柚子が効いてるんです」

「あ、ほんとだ」「柚子だ、柚子」「なんで食べないのよ?具合悪いの?」
「冷ましてるんです。猫舌なんで」
「あはは」「かわいいわね笑」「つい最近テレビで見たんだけど、猫舌ってありえないらしいわよ」
「どういう意味ですかそれ」
「舌の感度は誰しも同じで、猫舌の人はただ舌の使い方が下手なだけなんだって」
「なんか納得いかないですね、それ」
「ホントかどうかわかんないけどねー」

「さっきの子の話だけどさ、今はもう全然会ってないの?」
「会ってないですね」
「そっかー、まだ心残りだったりするわけ?」
「心残りですけど、付き合いたいとか、そういうのはもうないです」
「へー」「そういう甘酸っぱい青春も後になればいい思い出よねー」
「まだ昇華しきれてないです」
「時間が消化してくれるわよ、きっと」
「その子と付き合った奴は僕の知り合いだったんですけど、僕が嫌いな奴だったんです」
「へー、Aくんでも嫌いな人とかいるんだ」
「たいてい僕が人を嫌いになることはないんですけど、そいつは別格でした」「そんなやつと付き合ってるのを知った時は、ほんと世の中不条理だなって思いました」
「純粋な子ほど、そういう男に騙されんのよ」
「ほんとになんなんだよってかんじです」「しかも。。。そいつ、彼女を妊娠させて逃げたんです」
「え。。。」「ごめんなさい、色々聞いちゃって」「もうラーメン十分冷めたんじゃない?」
「今でもそいつを殺してやりたいって思うことがあります」
「ほ、ほら、麺のびちゃうわよ」
「なんでそんな奴に騙されちゃうんだよって。僕なら、僕なら絶対そんな思いさせなかったのに。。。」

「なにからーめんの方、問題ありましたか?」
「あ、いえ、彼猫舌なんですよ。あはは」
「・・・」

「わかってるんです」「こんな風に人を憎んだりしちゃダメだって」「憎しみは何も生まないって」「でもFacebookとかでそいつを見つけた瞬間とか、全部甦ったりして、負の感情でたくさんになってしまうんです」
「ごめんなさい、私のせいで思い出させちゃって本当にごめんなさい」
「Aさんは何も悪くないです。これで昇華すればいいんです」
「Aくんそんな辛い過去があったのね」
「すいません、こんな暗い話一方的にしちゃって」
「私はいいのよ、全然。」
「いやーやっぱ中村二代は冷めてもうまいです」