時連なりし、そして一念に回帰せし。
僕の1日は不快で始まるのさ。
朝が来て、起きることは、1日で最も苦痛かもしれないね。
次に苦痛なのは、1日中靴下を履いていなければならないことだな。
そうだ、それに違いない。
Pガチャ。P
ドアを明けた瞬間に外の風が一気に部屋の中に流れ込んだ。
そして、眩しい朝日。
切なさと、哀しさと、少しの希望が立ちこめていたんだ。
マリアも、こんな僕みたいな感受性を持ち合わせてたりするんだろうか。
白い息に嬉しくなってみたり、冷えきった指先を首で温める喜びだったりを。
アデルノはいつもよりどんどん加速していった。
しかし、途中で転びかけて、焦ってはいけないと急激に平常心を保とうとする。
その日、アデルノは突き動かしていたものは、
眩しい朝日だったのか、
詰まる所の自己肯定感だったか、
絶対的な孤独だったか、
将又、マリアであったか。
走っていると、色んな事が頭を駆け巡る。無意識に。
それはおそらく単調なリズムと単調な作業から来る、脳の初期プログラムなんだろう。
/僕はこうして毎朝走っているけど、僕は走る事が好きなんだなぁ。/いや、走る事を続けてきたから、勝手に頭では好きだと勘違いしてしまっているのかもしれない。/好きだから続けられたのではなく、続けたから好きになったのではと。/この2種類の対立は、帰納法と演鐸法というものか。/そうか、宗教が演鐸法で、科学は帰納法なんだなぁ/もしかしたらこれは世紀の大発見かもしれないなぁ。/
遠くから、一人の女性が近づいて来た。
カトリーヌだった。
隣にマリアの姿はなかった。
アデルノはカトリーヌに関しては特に何の感情も抱いていなかったと思う。
だから、自然と目が合ったし、自然と会話になった。
「おはようございます」
「あぁ、どうも」
「毎朝、
「え?」
走られてるんですか?」
「あ、あぁ、そうですね」
アデルノはその場でジョギングを続けた。
それは、長くは喋りませんということを示していたかもしれなかった。
そんなことを平気にしてしまうくらい、アデルノはカトリーヌがどうでも良かった。
無関心以上に冷酷な態度はこの世にあるんだろうか。
「今日はとても寒いですね」
「うん、風が強いね」
次の瞬間にアデルノは「いつも隣にいる彼女は今日は?」と言いそうになった。
アデルノは「じゃ」と言ってまた走り出した。
僕がカトリーヌの立場で、
話も早々に「いつも隣にいる彼女は?」と言われたら、
それは「お前なんかどうでもいい」と言われるのと同じことじゃないか。
女心とかそんなものではなく、
存在を否定してしまうところだった。
僕は全く、なんて迂闊なやつなんだ。
アデルノはしばしば自分を責めることがあったが、
そこに答はなかったし、とても生産的とは思えなかった。
自分が悪いんだという問い詰めの先にゴールはなく、
ただ罪悪感に苛まれるだけだったのだ。
その罪悪感こそが、彼が自身を救う唯一の方法だったのかもしれない。
僕は悪者だ。と。その先に踏み込んでくるものはいないから。
自分を底辺まで落とすことで、これ以上に堕ちる事はないという安心感を。
タッタッタッタッ
どこまで走り続けていっても、この罪悪感は拭われないのだろうなぁ。
根本的なもんなのだなぁ。
急激にスピードを上げて、アデルノは町をかけていった。
止まらずに、速く、速く。
公園の近くで、アデルノは柵に手をついた。
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ、う、ハァハァハァ
心臓がバクバクしてしまった。
ズクンズクン、ズクン
ハァハァハァハァハァハァハァハァ、く、ハァハァハァ
苦しい。
ズクン、ズクン
ハァハァハァ、ハァハァ、ハァハァハァ
あぁ、そうか、
ハァハァ、ハァ
これもか、はは。
ハァ、ハァ、ハァ
僕の1日は不快で始まるのさ。
朝が来て、起きることは、1日で最も苦痛かもしれないね。
次に苦痛なのは、1日中靴下を履いていなければならないことだな。
そうだ、それに違いない。
Pガチャ。P
ドアを明けた瞬間に外の風が一気に部屋の中に流れ込んだ。
そして、眩しい朝日。
切なさと、哀しさと、少しの希望が立ちこめていたんだ。
マリアも、こんな僕みたいな感受性を持ち合わせてたりするんだろうか。
白い息に嬉しくなってみたり、冷えきった指先を首で温める喜びだったりを。
アデルノはいつもよりどんどん加速していった。
しかし、途中で転びかけて、焦ってはいけないと急激に平常心を保とうとする。
その日、アデルノは突き動かしていたものは、
眩しい朝日だったのか、
詰まる所の自己肯定感だったか、
絶対的な孤独だったか、
将又、マリアであったか。
走っていると、色んな事が頭を駆け巡る。無意識に。
それはおそらく単調なリズムと単調な作業から来る、脳の初期プログラムなんだろう。
/僕はこうして毎朝走っているけど、僕は走る事が好きなんだなぁ。/いや、走る事を続けてきたから、勝手に頭では好きだと勘違いしてしまっているのかもしれない。/好きだから続けられたのではなく、続けたから好きになったのではと。/この2種類の対立は、帰納法と演鐸法というものか。/そうか、宗教が演鐸法で、科学は帰納法なんだなぁ/もしかしたらこれは世紀の大発見かもしれないなぁ。/
遠くから、一人の女性が近づいて来た。
カトリーヌだった。
隣にマリアの姿はなかった。
アデルノはカトリーヌに関しては特に何の感情も抱いていなかったと思う。
だから、自然と目が合ったし、自然と会話になった。
「おはようございます」
「あぁ、どうも」
「毎朝、
「え?」
走られてるんですか?」
「あ、あぁ、そうですね」
アデルノはその場でジョギングを続けた。
それは、長くは喋りませんということを示していたかもしれなかった。
そんなことを平気にしてしまうくらい、アデルノはカトリーヌがどうでも良かった。
無関心以上に冷酷な態度はこの世にあるんだろうか。
「今日はとても寒いですね」
「うん、風が強いね」
次の瞬間にアデルノは「いつも隣にいる彼女は今日は?」と言いそうになった。
アデルノは「じゃ」と言ってまた走り出した。
僕がカトリーヌの立場で、
話も早々に「いつも隣にいる彼女は?」と言われたら、
それは「お前なんかどうでもいい」と言われるのと同じことじゃないか。
女心とかそんなものではなく、
存在を否定してしまうところだった。
僕は全く、なんて迂闊なやつなんだ。
アデルノはしばしば自分を責めることがあったが、
そこに答はなかったし、とても生産的とは思えなかった。
自分が悪いんだという問い詰めの先にゴールはなく、
ただ罪悪感に苛まれるだけだったのだ。
その罪悪感こそが、彼が自身を救う唯一の方法だったのかもしれない。
僕は悪者だ。と。その先に踏み込んでくるものはいないから。
自分を底辺まで落とすことで、これ以上に堕ちる事はないという安心感を。
タッタッタッタッ
どこまで走り続けていっても、この罪悪感は拭われないのだろうなぁ。
根本的なもんなのだなぁ。
急激にスピードを上げて、アデルノは町をかけていった。
止まらずに、速く、速く。
公園の近くで、アデルノは柵に手をついた。
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ、う、ハァハァハァ
心臓がバクバクしてしまった。
ズクンズクン、ズクン
ハァハァハァハァハァハァハァハァ、く、ハァハァハァ
苦しい。
ズクン、ズクン
ハァハァハァ、ハァハァ、ハァハァハァ
あぁ、そうか、
ハァハァ、ハァ
これもか、はは。
ハァ、ハァ、ハァ