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tokyo, Japan
パソコンとお香があればだいたい幸せです。

2012年11月27日火曜日

A氏の平凡な日常⑧

「え〜、どこ行こう〜」「私、実はこの辺あんまり知らないの笑」
「君の近所だろ?笑」
「近所で人と会うことって意外と多くないもん」
「おいしいとこがいい」

久々に会ったMちゃんは、少し大人びていて、魅力的であった。
待ち合わせには遅刻してきたけど。



彼女は、2年前に、派遣社員でA氏と同じ職場で働いていたことがあった。



数週間前、A氏は会社のイベントから帰る途中、
アルコールで少し足をフラつかせながら、
なんとか終電の時刻に間に合った。

ホームに電車が到着して、人がたくさん降りてきた。

その中にMちゃんもいたのである。

「あ」
「あ、お久しぶりです」
「久しぶり」「話したいとこだけど、これ終電なんだ、ごめん」
「じゃ、また。今度飲みにでも行きましょ」
「うん、連絡する」

人ごみが押し寄せる僅かな時間で、僕らはなんでもないような会話をして、別れた。


彼女の発言は単なる社交辞令だったと思うが、
久々に彼女と話がしたくなって、メールを送った。


そして、今に至る。


Mちゃんは25歳だが、いわゆる高級住宅地にある実家に家族と暮らしている。
たしか、長く付き合ってた彼氏がいた気がする。
会ったことはないが、写真で見たことがあった。
かなりガタイもよく、僕なんかじゃ比べ物にならなかった記憶がある。


「まだ、あの彼氏と続いてるの?」
「一応つづいてるよ、マンネリだけどねー笑」

あぁやっぱりか。

彼女は年上の僕にもタメ口である。
駅から少し歩いたところにある多国籍料理屋に入った。


店内はオシャレな作りで、土曜の夜ということもあって混んでいた。

テーブルに腰をかけると、すぐに
「本日こちらのテーブルを担当させていただきます、Bです」

黒いTシャツの女の子が挨拶にきた。

「私、ビール」
「えーと、僕はシャンディガフ」
「はい、かしこまりました」


A氏は今日、Mちゃんに会うことをK子には話していなかった。


「Aさんは、彼女できたー?」
無意識のうちに
「いや、いないんだよね」
と言っていた。

「相変わらず、仕事ばっかり?」
「うーん、そうだね」「なかなか良い娘もいなくてね」
「そろそろ結婚とか考えたりしないのー?」
「考えてるよ、ちゃんと」

「ふーん、Aさん大手企業だし、引く手あまたなのにー」
「んなことないって」

生春巻きにはパクチーが入っていて、
久々に食べるタイ料理は新鮮だった。

「あれー?」「もうー」
「何してんの?笑」
「これどうやって食べたー?」「なんか広がっちゃうんだけどー笑」

彼女の生春巻きは、完全に皮がやぶれ広がっていた。
それはただのサラダだった。

彼女はこういうドジなところがあった。
でもそれは計算とかではなくて、
とても可愛げがあった。


A氏は女子の行動には敏感だった。
女子は頭がいいことを学生の頃から学んでいた。
Mちゃんは、そんな疑い深いA氏が唯一「天然」と認められる女性だった。

Mちゃんは、ドジで、トロトロしてるが、
少なくとも仕事は早かった。
仕事をしている時もトロトロしているが、
なぜか気づくと終わっているという印象だった。
彼女にはなぜか「余裕」があった。


「エビおいしー」「Aさんも食べてくださいよー」
「食べてる食べてる」


MちゃんはK子に比べれば学歴は劣るが、
意外と色々真面目に考えていたりして、真面目な話でも話が弾んだ。

仕事のこと、結婚のこと、日常のこと。
K子と話していても、こんなに気を遣わず話が弾むことはなかった。
Mちゃんはささいなことでも無邪気に笑ってくれた。


「私の友達で良ければ良い娘、紹介してあげようかー?」
「んー」

分かっていたことではあったが、
自分が彼女の枠の外にいることを読み取ってしまい、
気が沈んでしまった。


A氏は、相手が自分をどう思っているかということに対して以上に敏感であった。
それが彼を救うこともあれば、ひどく落ち込ませることもあった。

「今は、べつにいいかな」
「変な女には、ほんと気をつけてねー」
「変な女って?」
「金目当てとかさー」
「それはすぐ分かるよ」
「いやー、けっこー分かんないってー」


非正規雇用、格差社会、教育、正社員
結婚、愛、理想、専業主婦、家庭、
定年、子供、適齢期、年収、年金


なんてくだらない世の中なんだろうかと思った。
たしかに、遺伝子を残す意味で、
配偶者に金を求めるのは生物的にも合理的かもしれない。


「また会おうね」

その言葉にA氏は少しの期待を寄せていた。

「うん、会おう」

2012年11月20日火曜日

充足と渇き


人と触れ合ったり、
細胞をみなぎらせたり、
充足を感じると、
どんどんバカになってく。

バカというか鋭さがなくなってく。


足りないくらいがちょうどいい。



そうは言っても、なにもかも確信がもてないんだ。
フラフラしていて。



ぐるぐるぐるぐるぐる


こうやって死んでいくのかもしれません。




形を残そう。

2012年11月17日土曜日

とある弁護士事務所にて


「先生、この2年間はなんだったんでしょうか」
「・・・」
「突然身柄を確保されて、留置所暮らし。そして、警察、検事の尋問の日々。そこから、数々の裁判。。。いつ、普通の生活に戻れるんでしょうか。。。」
「確証できませんが、最低でも1年はかかると思います」
「いちねん・・・」
「・・・」「Aさん、一審での判決が覆ることはありません。我々ができることは、ニ審に向け、無罪を立証する準備をするしかありません。」「今は我々も悔しい気持ちで一杯です。しかし、ニ審で無罪を勝ち取れる可能性は十分にあると考えています」
「私は、ただ、良いソフトを作りたかっただけなんです。。。違法コピーに関しては注意を促していました。。。」「警察さえも最初は開発に協力的であったのに、彼らの不備があった途端に私に責任を押し付けるなんて、国として許されるんでしょうか」
「私達も憤慨しています」「明らかに、警察側からの意図的な起訴としか思えません」「しかし、そういった類いの発言は次からは控えましょう」「不利になるだけです」
「これじゃあ、闘いようがないじゃないですか。。。」「どんな証拠を用意しても、警察での聴取を出されて。。。」
「今回我々が彼らに提示した証拠はかなり専門的な知識を要するものばかりでした」「ニ審では彼らの理解を得られるようなものに変更する必要があります」
「今回の争点は①幇助行為、②幇助意思、③それらの因果性、の3点です」「まず、①の・・・・」


とある警視庁にて

「B管理官、副総監からお電話です」
「!・・・5420」
トゥルルル♪
「はい、Bです。お疲れ様です」
「」
「ええ、見ました」
「」
「いえ、そんなことはありません」
「」
「はい、おっしゃる通りだと思います」
「」
「はい、・・・はい。」
「」
「え?・・・それは・・・どういう意味ですか?」
「」
「・・・・」
「」
「・・・それは、上からの指示ということでしょうか?」
「」
「・・・・」
「」
「・・・私は・・・本部長の方から、今回で終わりだと聞いていました」
「」
「・・・いえ、そういうわけではありません」
「」
「はい、わかっております」
「」
「・・・・」
「」
「・・・わかりました」
「」
「はい、・・・・はい」
「」
「失礼いたします・・・」


「こんな時間に、副総監からですか?」
「・・・あぁ」
「例の、Sherkの件ですか?」
「・・・そうだ」「またお前には色々手伝ってもらうことになりそうだ」
「あれで終わりだって管理官言ってたじゃないですか・・・」
「分かってる・・・上からだ」
「若手の分際でゴチャゴチャ言いたくないですが、今我々はどんどん誤ったことを犯している気がしてなりません」
「・・・・」「今回のケースは、単なるネット犯罪では済まないようだ。国家の秩序を揺るがしかねないという認識らしい」
「まるでノーベルにダイナマイトをぶちまけるようなことしてますよ、僕ら」


とあるマンションの一室にて

「ママー、パパは?」
「パパは外で悪いヤツらをこらしめてるの」
「そとにはそんなにわるいひとたくさんいるの?」
「夜は悪い人がたくさんいるの」
「なんでよるはわるいひとがたくさんいるの?」
「暗いからよ」
「ふうーん」「ずっとあかるかったらいいのにね!」
「そうね」
「ママ、きょうは『あくのくに、ぜんのくに』よんで」
「好きなのね、いつも途中で寝ちゃうくせに笑」
「ねない!きょうはねない!パパがくるまでねない!」


昔々、あるところに悪の国と善の国がありました。
悪の国では悪い人達がとんでもない悪さをしていました。
善の国では善い人達が平和に暮らしていました。
悪の国ではみんな敵同士でケンカや殺し合いばかりでした。
善の国ではみんな協力しあって助け合っていました。

悪の国はどんどん人が減っていきました。
善の国はどんどん人が増えてきました。

ある日、食べ物に困った悪の国の一部の人々が善の国侵入してきました。
善の国の人は、あたたかく迎えました。
ウソをつけない善の人々を悪の人々は次々と騙し、
食料を奪っていきました。
それに続いて悪の国の人々が善の国に侵入してくるようになりました。
善の人々はどんどん少なくなっていきました。

同時に、悪の国の人々も善の国に移り、減っていきました。
悪の国では人が少なくなり、どんどん生活が苦しくなっていきました。
そして、少ない食料の奪い合いになり、さらに人が減っていきます。
最後に残った悪の国の住人は一家だけになりました。
一家は生き延びるべく、助け合いました。
すると悪の国に悪い人はいなくなり、一家から善の人達が増えていきました。

善の国では、善い人達が完全に悪い人達に騙され、殺されてしまいました。
善の国に、善い人が全くいなくなり、悪い人だけになってしまいました。

一方、悪の国善の人達でいっぱいになりました。

こうして、悪の国と善の国は逆転してしまいました、とさ。
そして、、、、、
「ほら、また途中で 寝ちゃって・・・笑」

カチッ

「おやすみ」