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tokyo, Japan
パソコンとお香があればだいたい幸せです。

2013年1月9日水曜日

とある事務所にて

「あれ?お前今どこ置いた?」
「ここです。そいで、ここからここまで返しました」
「んー」「なるほど」

「あのう、編集長、早く置いてくださいよ」
「今原稿チェックしてんでしょーが!」
「何度も言ってますけど、原稿チェックするか、オセロするか、どっちかにしてください」「いや、どっちかじゃなくてオセロやめて、原稿チェックに専念してください」
「バカヤロー、オセロしながら原稿チェックすることに意味があるんだろーが!」
「・・・。」
「しっかし、お前全然上手くならねぇな」
「原稿ですか?」
「オセロに決まってんだろ!」
「オセロは仕事と関係ないじゃないですか!私の時間、なんだと思ってるんですか!」
「・・・。いやまぁ時間かけてんのは悪ぃんだけどよ、こんなもんなんだよ、読者の読み方って」

「Liquersの特集に関しては悪くない。書評も先月よりだいぶ良くなった。ただ、」
「・・・」
「四半世紀の連載は打ちきりにしようか」
「!」
「これはこっちの事情なんだけどな」
「読者アンケートですか?」
「んー、あれだ、要はクライアントだ」
「・・・」
「部数も伸びてるんだけどな、こっちも広告に頼ってる商売だからなぁ」
「そうですか・・・残念です」
「んー、次、俺だっけ?」
「はい」
「・・・、よっ」
ペコっ、ペコっ、ペコっ

「個人的には彼ら好きなんだけどなぁ、応援してやりてーし」
「はい・・・。Aさんも私の取材気に入ってくれてたみたいなんですけどね・・・
「んー、そうな」「まぁ昔の俺だったらクライアントに噛みついてでも書きたいこと書いてたんだけどな」「超現実的な話、うちも既得権益的な部分はあるからな」
「はい。。。」

「まぁでも、逆にこのタイミングで打ちきりの方が俺はいいと思うけどな。やっぱり人気のあるうちに打ち切らないと、読者は飽きてくから」
「でも、個人的には四半世紀はもっと上に行くと思うんです」
「んー、それは分からんぞ」
「だって、メディアの露出だって増えてますし、本だって出版して部数だいぶ伸ばしてますよ」
「オセロと同じなんだよなぁ」
「え?」
「だんだん駒置くとこ限られてくんのよ、アーティストも」「映画だって本だってなんだってそう。アバンギャルドはいずれ時代が追いついちゃうわけ」「彼はそういう難しいとこで勝負しちゃってる」
「彼は、Aさんは、それも分かってると思うんです」「分かった上で活動してると思うんです」

ペコっ、ペコっ

「ほい、お前の番」
「・・・。」「これ私置くとこあります?」
「ないよ」
「パスです」

ペコっ、ペコっ、ペコっ、ペコっ

「またパスな?」
「ほんとだ」

ペコっ、ペコっ、ペコ・・・